1995年兵庫県南部地震では、RC系建物中間階のある層において柱がせん断破壊を起こしたあとに、ついには軸力保持能力を喪失して軸方向に崩壊した例が数多く見られた(中間層崩壊)。中間層崩壊を防止するためには、柱が軸力保持能力を喪失するまでの過程を知り、この過程を表すことができる解析モデルを開発することが重要となる。 本研究では、曲げ降伏後にせん断破壊するタイプのRC柱を対象として、これらが一定軸力と水平力の作用下でついには軸力保持能力を喪失する(軸崩壊)までの実験を行った。中間層を想定して比較的低レベルな軸力(軸力比0.26)とした。載荷履歴は、「単調載荷」、「両振り載荷」、「2方向載荷」の3種類とした。 また、柱の軸崩壊を適切に表現するために、実験から得られた主筋の座屈挙動を参考にして、ファイバーモデルのなかに座屈による鉄筋の履歴劣化を導入することを試みた。 得られた知見は以下のとおりである。 (1)限界状態時における水平変形増分に対する軸変形増分の比率(変形増分比)は、0.26〜0.29であり、載荷履歴による差はなかった。 (2)軸力比0.26程度の場合、水平力がゼロ近くに低下するまで安定して軸力を保持することができる。 (3)限界状態時水平変形および限界状態時軸変形は、いずれも2方向載荷の場合の違いが大きかった。 (4)限界状態までの吸収エネルギーは、水平力によるもの、軸力によるもの、これらの和、のいずれを取っても載荷履歴による違いが大きかった。 (5)単調載荷の場合における主筋の座屈開始ひずみ度は0.8%程度であった。 (6)主筋の座屈を考慮したファイバーモデル解析により実験結果の解析を試みたが、限界状態に関する結果は十分なものではなかった。しかし、それでも座屈を考慮しない場合に比べるとはるかに精度は改善された。
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