鉄筋コンクリート立体内柱・梁接合部部分架構試験体2体を製作した。柱・梁接合部の破壊には、通し配筋される梁主筋の接合部内付着性状に起因したせん断伝達経路の変化が重大な影響を与えることが昨年度の研究で明らかとなった。そこで実験変数を梁主筋の付着・定着性状として、1体は通常の主筋を配筋して付着劣化を引き起こし、他の1体では梁主筋の危険断面に定着鋼板を設置して梁主筋の定着力を直接に接合部パネル・コンクリートに伝達できるようにした。立体部分骨組の挙動をより明確に理解するために、比較用の平面十字形柱・梁接合部試験体4体を用意した。平面部分骨組試験体の配筋、コンクリートなどは立体試験体と同一とし、接合部内における梁主筋および柱主筋に沿った付着性状を変数とした。実験は柱脚をピン支持、梁端をピン・ローラー支持した試験体の柱頭に正負繰り返し水平力および圧縮一定の柱軸力を与えることによって行なった。立体骨組試験体における2方向水平力の載荷は柱頭が8の字を描くように加える。現在のところ、平面内柱・梁接合部試験体4体の実験が終了した段階である。その結果を以下に述べる。 1.最大層せん断力は接合部内梁主筋の付着が絶縁されることによって11.3%減少し、接合部内柱主筋および梁主筋の付着が絶縁されると20.7%減少した。2.梁主筋の測定ひずみから求めた接合部入力せん断力は増大し続けた。繰り返し載荷によって接合部パネルのせん断損傷が累積するため、接合部内柱・梁主筋には層せん断力零時において弾性の残留歪みが生じた。このことから接合部パネルの水平および鉛直方向の変形性状が接合部のせん断挙動に影響を与えると考えられる。3.接合部せん断変形角の進展は接合部パネルの圧縮主ひずみおよび引張り主ひずみの増大が原因である。接合部内主筋の付着が良好である場合には接合部パネルの二つの主ひずみはともに引張りを呈し、層せん断力は増大した。これは接合部パネル内のせん断伝達の一部を付着力で負担するためである。これに対して、接合部内主筋の付着が劣化した場合にはパネル内の斜め圧縮ストラットに応力が集中し、パネル中央のコンクリートは最終的に圧壊した。
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