鉄筋コンクリート骨組内の柱と梁との交差部(柱・梁接合部)には、地震動による3方向外力によって複雑なせん断力が作用する。しかし、立体骨組において柱・梁接合部のせん断破壊が先行する実験研究は少なく、検討は不十分である。このような立体骨組接合部の破壊性状を検討するために、梁主筋の定着性能を変数として鉄筋コンクリート柱・梁部分架構試験体2体(実物の約1/2スケール)に軸力および二方向水平力を加える実験を行った。1体では梁主筋の危険断面位置に定着鋼板を設置して梁主筋の定着力を直接に接合部パネル・コンクリートに伝達できるようにした。応力の流れを明解にするため、スラブは設けなかった。コンクリート圧縮強度は23MPaであった。また立体による効果を検証するために、昨年度に実施された平面柱・梁接合部試験体の実験結果と比較した。試験体は全て接合部のせん断破壊によって耐力が決定した。検討の結果を以下に述べる。1)一方向加力時の最大耐力は、梁危険断面位置に定着鋼板を設置すると約10%増大し、加力された直交梁が付くことにより30%以上増大した。2)定着鋼板が接合部コア・コンクリートの面外膨張を拘束したため接合部耐力は増大したが、一方で、定着鋼板は接合部内梁主筋の付着性能を劣化させる要因になった。3)架構の違いにより最大耐力に差が生じたのは、直交梁が接合部パネルの膨張および損傷を抑制したためである。接合部パネル膨張に対する直交梁の拘束力は、加力方向に生じる引張り鉄筋力の1/4程度であった。4)立体架構における二軸せん断力下の接合部せん断強度は矩形相関曲線の外側に位置した。すなわち、各構面のせん断応力に対して独立に設計することで、任意方向のせん断力に対して柱・梁接合部を安全に設計することができる。
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