研究概要 |
現在のところ弾塑性構造物の風応答については不明な点が多いため,耐風設計で想定する最大級の風速に対し骨組が弾性的に挙動する範囲に納まるように設計されている.しかし,外力の不確定性を考慮すれば,構造物の終局耐力を検討する上で風に対する弾塑性応答の性状を知る必要がある. 当研究では,風力を受けて鋼構造物が弾性限界を超えて応答する場合について実験を行い,実験および解析の結果を総合して風力を受ける鋼構造物の弾塑性性状を特にエネルギー的観点から明らかにすることを目的としている. 平成11年度は,前年度行った電算機―試験機オンライン実験での実験条件による違いを詳しく検討し,風による弾塑性応答について模擬風力を用いた数値解析を行い,それらの結果と比較を行った.検討パラメータは,長方形平面の建物を想定し,平均風力と変動風力が共に存在する風方向振動と,変動風力のみから成る風直角方向振動の2種類の振動それぞれに対し,建物固有振動数(風力パワースペクトルのピーク値との比で設定),入力の大きさ(降伏耐力との比で設定),減衰定数(1%,2%),復元力特性の形状(bi-liner型,大井高梨モデル,塑性剛性比)である.その結果,風方向応答はbi-liner型復元力特性と良い対応を示し,これにより入力エネルギーを評価することが出来るが,風直角方向応答は,大きく異なることが分かった.さらに,これらを総合して風力を受ける鋼構造物が弾性限界を超えて応答する場合の塑性化に応じたエネルギー予測方法について検討を行った.
|