研究概要 |
1.はじめに これまでの振動に対する知覚閾の評価は,実際の生活環境とは隔たりのある実験結果に基づいて行われてきた。本研究は実状により近い環境条件のもとで被験者実験を行い,日常に即した水平振動に対する評価指標を得ようとするものである。 2.結果 本年度は,先に約30名の被験者に対して実施した,生活環境に近い状況下における水平振動知覚実験の結果を解析・検討した。その結果,振動の発生を予知せずリラックスして過ごすことで,水平振動に対する知覚閾はより大きくなるが,その影響量は振動数範囲によって異なることがわかった。この実験では振動発生に対する予知の有無や振動発生に対する意識の紛れ度合などについて主に検討したが,この実験結果をこれまでに実施した実験の結果を含めて比較検討した結果,アンケート方法にともなう被験者の意識の強さの違いなどは知覚閾に対してより大きい影響をおよぼす一方,被験者の姿勢や実験時間にともなう慣れなど,あまり影響をおよぼしていない要因があることが推察できた。 これらの結果を通して,日常環境により即した評価を行うためには,一般居住者に対するヒアリングやアンケート調査を通じて,実環境における振動評価に対して影響を及ぼす周辺要因を抽出する必要性を認識した。既往研究や各国規準類の調査をふまえると,実環境における水平振動の知覚に対しては,これまで評価の基盤とされてきた体感だけでなく,視覚や聴覚などの他の感覚も含めた周辺要因が影響をおよぼすことがわかった。 3.今後の研究課題 本年度の結果によって,被験者の状況や意識,視覚・聴覚などの体感以外の感覚などを含めた周辺要因が知覚閾に影響を及ぼすことがわかった。今後はこれらの周辺要因による知覚閾への影響を追究するとともに,できる限り多くの要因を加味した統括的な評価方法を検討したい。
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