研究概要 |
これまでの水平振動に対する知覚閾の評価は,実際の生活環境とは隔たりのある実験結果に基づいて行われてきた。本研究は実状により近い環境条件のもとで被験者実験を行い,日常に即した水平振動に対する知覚閾を得ようとするものである。 本年度は,これまでに検討した振動発生の予知や振動発生に対する意識の紛れ度合などが知覚閾に及ぼす影響に加えて,実際に振動を感じるきっかけとなる視覚が知覚閾に及ぼす影響を知る実験の結果を検討した。その結果,窓外の景色が見える場合には,体感で感じない振動も視覚からの振動の認識によって感じる範囲があることがわかった。視覚の影響は特に変位が大きい範囲で顕著であり,低振動数範囲では体感による知覚閾との差が大きい。 このような視覚による振動の認識が知覚に及ぼす影響と被験者の状況や意識にともなう周辺要因による影響とを総合し,生活環境に存在する周辺要因を考慮して知覚閾のばらつきを評価した。それらの結果を風揺れに関する居住性能評価指針と比較検討することで,現在の指針の評価レベルが振動の発生を予知して構えた状態にある知覚閾のばらつきで評価できることを明らかにした。 今後は,これらの実験結果に基づいて,周辺要因を加味した風揺れに関する居住性能評価指標の提示を模索したい。
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