コンクリート構造物の維持保全の観点から、まず意匠性の回復および耐久性の向上をねらいとする表面・表層部の補修再生工法に供する材料性能について基礎的実験を行い、次いで沖縄、浜松、新潟に暴露した試験体の性状変化を追跡調査した。この実験および調査から以下のことが明らかになった。 1.劣化部分に供する充填材として、特殊アクリル樹脂系のポリマーディスパージョン使用のセメント:砂=1:3、水セメント比=54%のモルタル(材齢28日圧縮強度28N/mm^2、付着強度1.2N/mm^2)を開発した。このモルタルは塩化物の遮断性に優れるとともに中性化の抑制効果も認められた。 2.劣化部分に施工された充填材の表面に供する中性化抑制材として、特殊アクリル樹脂系のポリマーディスパージョン使用のセメントペーストを見出し、中性化促進試験により抑制効果を確認した。 3.フッ素樹脂を主とする耐候性防水材は、防水性能のほか、コンクリート表面の濡れによる明度変化が小さいことを突き止めた。 4.基礎的実験結果を踏まえて作製した各種供試体(前述の充填材、中性化抑制材、耐候性防水材)の暴露実験(暴露1年)では、いずれの地域とも川砂モルタルに比べ、劣化現象は見られなかった。
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