平成10年度は、鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材が直列的に結合される接合部(継手部に対応する)の応力伝達機構を明らかにするために、鉄筋コンクリート部材に埋込まれる鉄骨部材の長さを実験変数とする載荷実験が行われた。これらの実験の結果から、部材の性能を発揮させるためには鉄骨せいの3倍程度の埋込長さが必要であることを明らかにし、埋込まれた鉄骨部分の支圧および摩擦機構に立脚した応力伝達機構に基づいて導入された耐力式によってこれらの実験結果を良く説明できることが示された。 平成11年度は、平成10年度の結果に基づいて、部材の耐力を発揮できなかった埋込長さを持つ接合部を対象として、部材の性能を発揮させるためには、接合部にどのような補強を行えば良いか実験的に検討した。対象とした埋込長さは、鉄骨せいの2倍である。補強方法としては、平成10年度に提案された応力伝達機構に基づいて、接合部のせん断耐力を増大させるためにX形配筋を施したもの、埋込まれた鉄骨部分のてこ作用によって生ずる支圧力を鉄筋コンクリート部分に効率的に伝達するために鉄骨埋込始点および端部にせん断補強筋を集中的に配筋したものおよび鉄骨埋込端部にエンドプレートを設け、エンドプレートに生じる曲げ引張力に抵抗させるために、鉄筋コンクリート部分に腹筋と鉄骨ウェブを貫通するせん断補強筋を配したものの3種類である。なお、比較のために無補強の試験体も計画された。これらの実験の結果、鉄骨埋込始点および端部にせん断補強筋を集中的に配筋することおよび鉄骨埋込端部にエンドプレートを設け、腹筋と鉄骨ウェブを貫通するせん断補強筋を配した接合部は、部材と同等の性能を有することを明らかにした。 今後、こえらの実験および解析的知見に基づいて、異種構造部材が直列的に結合される接合部の合理的な設計法を提示する予定である。
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