地震時には建物が構造的被害に至らぬ場合も、居住空間に持ち込んだ家具や設備機器が凶器と化し、物的な損傷に加えて居住者を傷つけ、地震最中や地震直後の緊急行動を妨げている。よって、家具什器が引き起こすであろう室内環境悪化の危険度を事前に診断し、居住者にそれをわかりやすく提示し、改善策を考える手段とすることが地震対策推進の上から重要である。 本研究では、CADソフトウェアを利用して実際の住戸内部空間と家具什器の配置をパーソナルコンピュータ上に表現し、地震時に室内環境がどのように変化することをシミュレーションするプログラムを試作した。1993年釧路沖地震における集合住宅の室内被害調査データをこのプログラムに入力し、実際の被害と予測危険度を比較検証し、概ね妥当な結果を得た。また震度の上昇に伴って、室内危険度がどのように変化するか、室内危険度と家具数や配置との関連傾向を分析した。 今後の課題としては、家具の設置状態を考慮し、転倒散乱条件式を改訂すること、プログラムの操作をユーザにわかりやすく簡便にすること、予測被害や危険度予測の2D、3D表示を実空間により近づけることなどを予定している。
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