研究概要 |
超高層ビルのアクティブ振動制御問題として,ある限度を超えた強風が作用する場合には,制御装置による制御力が十分に効果を発揮することができなくなり,制御を打ち切ることになる等の問題も発生する。そこで,アクチュエータとして建物に作用する空気力の一部を利用することを考えた。空気力をコントロールして制御力に利用できれば,制御力は風速値に応じて大きくすることが可能となり,強風時においても対処可能なシステムを構築することが期待される。 まず,ジェットによって模型側面の圧力分布をコントロールすることが可能かどうかを実験的に調べた。ジェットは模型の風上面角部から噴出させれば,模型表面圧力は変化するという結果が得られた。また,周期的なジェットによる実験結果はカルマン渦とジェットとの相互作用を示し,表面圧力に及ぼすゆっくり変化させたジェットの効果は準定常的な現象を示す。全体的な傾向から,ジェットを制御システムのアクチュエータとして利用できることが示された。 ジェットを利用した制御システムは,ジェットの噴出タイミングとジェット流量を最適な状態に保つことが重要となる。これらのパラメータを自動的に探索する方法としてGAを応用した。制御システムはファジィ制御用とパラメータ探索用としての2台のパソコンで構成されている。風洞で実験を行った結果,自動的に2個の最適パラメータを探索することができた。 さらに,建物振動時に作用する空気力を推定する方法として遺伝的アルゴリズム(GA)を応用する方法をパソコンによって検討した。GAは線形性に限定されず比較的容易に推定可能な方法であり,自励空気力の非線形モデルを対象としてGAの妥当性を検証した。今後に残された問題も存在するが,GAと制御を組み合わせた制御システムの構築,およびGAによる空気力の同定手法の今後の発展性が示された。
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