建築壁体の耐久性向上は、地球温暖化防止にも大きな貢献が期待できる重要な研究課題であって、熱・水分性能設計とは密接な関連があり、長周期の熱・水分同時移動性状を考慮した、弾・塑性場の柔軟かつ強力な数値予測法が必須の検討手段となる。多次元建築複合壁体の空気移動を伴う熱・水分性能の数値予測に関しては、近年いくつかの報告があるが、これを応力場の予測と連成させて、建築壁体の耐久性能予測への応用を試みる研究は、殆ど行われていない。 ここでは、建築材料の弾・塑性性状を考慮できる、3次元複合壁体に対する熱・水分応力のDR境界要素解析法(DRはDual Reciprocityの略である)を開発し、その予測精度と適用限界を明らかにすることを目的として研究を行ない、以下の成果を得た。 1)前年度に得た成果を用いて、熱・水分弾・塑性応力問題の2次元汎用解析法を試作した。また、汎用化と利便性向上のための計算コード改良も併せて行なった。 2)2次元非線形熱・水分同時移動のDR境界要素解析法を開発し、2次元計算体系全体の境界型解法として構築を試み、計算結果の基礎的な検証を行なった。 3)熱・水分弾・塑性応力の構成関係モデルを組み込んだ、3次元熱・水分弾・塑性応力問題のDR境界要素解析法を、前年度に得た成果を基に試作し、計算結果の基礎的な検証を行なった。 4)近年劣化が激しく、効果的な熱・水分性能改修が強く求められている、北米での煉瓦壁体を検討事例として、断熱材や防水層の貼付形状が、その熱・水分応力性状に与える影響を比較し、耐久性向上に効果のある改修法を探った。 なお、3次元非線形熱・水分同時移動のDR境界要素解析法の開発も並行して進め、基本ルーチンを検証し、計算結果の基礎的な検証は行ったが、3次元計算体系全体の汎用性の高い境界型解法として構築は未だ十分に完了しておらず、今後の継続的に開発する予定である。
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