高齢者が居住する住宅において、トイレ、浴室の環境と設備を調査した。特に、運動能の低下した高齢者が安全に入浴できる設備等(浴室内の段差、手すり、滑り防止策、浴槽の種類など)や居住者に対してトイレ、浴室に対する不満、要望等の調査を行った。調査対象者は65〜97歳の男女86名であった。 浴室での転倒経験は全体の10.5%であり、転倒した者はすべて75〜97歳の後期高齢者であった。転倒の原因の多くは「滑った」てあり外因性のものであり、以前かかった病気で目の病気をもっていた者が、転倒した9名のうち5名であり、転倒経験の有無との間に有意な差が認められた。 トイレて気分か悪くなった原因は「めまい」「貧血」であり内因性のものであった。トイレて気分が悪くなった者のうち、以前かかったことのある病気が糖尿病や高血圧であった者とそれ以外の者との間に有意な差が認められ、これらの者で多かった。 浴室・脱衣室・トイレにおいて、対象者が不自由・不満と感じる点の多かった点を挙げる。浴室・脱衣室では「脱衣室が狭い」という不満が最も多く、浴室・脱衣室に不満がある者の約40%に上った。これは、洗濯機や洗面台等、物を過剰に置いていることで、幅の狭い脱衣室をさらに狭くさせていることが原因であった。 不自由を感じる点では「浴槽に入る時、出る時」と答えた者が多く、この要因として浴槽と洗い場の段差が考えられるが、今回の調査では25〜34cmの場合が最も多く、25cm以下、45cm以上の場合も少なくなかった。次いで多かったのは「浴室に入る時」であり、浴室と脱衣室の段差の推奨値(2cm以下)の例は4.6%にすぎず、多くの例が10〜15cmと大きかったことが一因であろう。 トイレに関しては「冬、寒い」という不満が35%と最も多く、便座暖房(本調査での設置率49%)や床暖房(同、1%)等の暖房器具の必要性が示唆された。
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