高齢者や身障者が使用するトイレ設備に要求される項目等を、3つの実験研究により検討した。 1.便座の高さの検討 : 若年者42名を被験者とし、左足にサポーターを着用させ、脚の不自由を模擬させた。便座の高さをJIS規格である40cmと43cmおよび46cmの3段階に設定した。各被験者に便器に座る、立つ動作を行わせ、筋電図、動作解析、使い勝手についてのアンケート調査により、最も適した便座の高さを求めた。平均的には43cmの高さの便座が最も使いやすかったが、被験者の身長と使いやすさとの間に相関が認められた。JISで規定されている40cmの便座は、身長の低い一部の者に適しているのみであった。 2.手すりの位置の検討 : 若年者48名を被験者とし、左足にサポーターを着用させ、脚の不自由を模擬させた。手すりの高さを住宅設計指針に記載されている70cmと65cmおよび75cmの3段階に設定した。また、手すりを使用しない場合の実験も行った。各被験者に便器に座る、立つ動作を行わせ、筋電図、動作解析、使い勝手についてのアンケート調査により、最も適した手すりの高さを求めた。起座時は着座時に比較して、手すりにより身体のぶれが軽減される傾向にあった。最も適した手すりの高さは個人差が大きく、指針に示されている70cmという高さは再検討の余地があることが示された。 3.介護に必要なトイレスペースの検討 : トイレ介助時に必要なスペースを実験検討した。自由空間に置いた便座に、歩行困難な者と車椅子使用者が着座、起座する場合に必要なスペースを動作解析により検討し、最小のスペースは各々1800mm×800mm、2000mm×1200mmであることが示された。
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