地域の生活を支える施設を充実させることが先進国として真に豊かで成熟した社会の形成につながる。 本研究は、障害児及び障害者施設の居住環境の現状を明らかにしながら、共生型の障害児施設にふさわしい居住環境像を模索することを目的とする。 本年度は、まず障害児及び障害者施設の平面図・配置図などの掲載された事例集等を収集し、施設種別、所在地、設置者、設置年、定員、敷地面積、延べ床面積、構造、設計者などの情報を整理した。 次に、この資料をもとに居住環境的に特徴のある13施設を調査対象として選定した。この中には障害児のための入所・通所施設のみならず知的障害者・身体障害者のための入所・通所施設も含まれている。 これらの13施設に対して訪問する日程の連絡と調整を行った上で、全施設を訪問し、施設長や現場の職員から施設整備の経緯、環境的にみた施設の良い点・悪い点、周辺住民との関わりなどについてヒアリングを行うとともに、図面の収集とヒアリングの内容を確認するための施設内部の写真撮影を行った。 ヒアリングの結果、多くの場合、施設の職員は設計者の意図に反して建物についてさまざまな不満を持っていることが明らかとなった。これは設計者が、施設の利用者である障害児・障害者や職員の要望を設計時に十分に把握していないこと、また、職員は建物に対する自分たちの要求を設計者に整理して伝えられなかったことによる。 本年度の調査結果を通じて、建築設計の知識のない福祉の専門家であっても、施設の設計時において建物に対する要求を体系的に整理して設計者に伝えることを可能にするため、「障害児・障害者施設職員のための施設設計チェックリスト」を試作する必要性を確認した。
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