地域の生活を支える施設を充実させることが先進国として真に豊かで成熟した社会の形成につながる。本研究は、障害児及び障害者施設の居住環境の現状を明らかにしながら、共生型の施設にふさわしい居住環境像を模索することを目的とする。 前年度に引き続き本年度は居住環境的に特徴のある施設を訪問し、施設長や現場の職員から施設整備の経緯、環境的にみた施設の良い点・悪い点、周辺住民との関わりなどについてヒアリングを行うとともに、図面の収集とヒアリング内容を確認するための施設内部の写真撮影を行った。この中には障害児の入所・通所施設のみならず知的障害者・身体障害者の入所・通所施設も含まれている。 次に、こうしたヒアリング結果に基づいて「障害児・障害者施設職員のための施設設計チェックリスト」を試作した。施設の設計に際しては、まず第一に施設側が利用者に提供したい居住環境やサービスの内容に基づいて建物に対するさまざまな要求に優先順位をつけること、第二にそれらを体系的に整備して設計者に伝えることが重要である。たとえ施設職員が建築の知識に乏しくても、その建物を使う職員として建物に対する要求を明確にすることが大切である。このチェックリストはこうした施主側の作業を支援するものである。 いくつかの施設の職員、利用者に試作したチェックリスト(213項目)を提示し、このチェックリストに対する意見をヒアリングした。最低限充足すべき項目と充足が任意の項目の分離明示、施設側からの管理優先に陥らないような配慮、チェックリストにより施設が画一化しないような工夫が必要との指摘を受けたが、基本的には全国の施設の居住環境のボトムアップにはきわめて有効との評価を受けた。
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