本年度は、高気密住宅・密閉時における各室任意汚染質発生に対応した定常濃度分布を迅速に評価するための測定法確立を目的として、まず建築研究所シリンダーハウスを用いたトレーサーガス試験に関する基礎実験を実施した。実験では、ステップダウン実験のほか、パルス実験を試み、後者においては放出間隔を可変とした。また、一部のケースでは想定した汚染質発生を実際に再現した定常放出実験を実施し、比較データを得た。その結果、トレーサーガス放出をパルス実験とし、放出間隔を30分程度とすれば極めて精度の高い定常濃度分布の予測・評価が可能となるとの知見を得た。また、併せて各室相互換気量の評価を試みたが、従来行っていたステップダウン実験よりも精度の高い評価が可能となることが分かった。これらにより、密閉時の換気性能評価法は確立されたと判断し、超高層集合住宅1軒を対象に本手法を適用し、4種類の汚染質放出モードに対応した定常濃度分布及び、各室相互換気量を評価し、実験室実験と同様、30分×室数程度の時間で評価可能であることを確認した。 次に、通風の利用を考慮した窓開放時の換気性能評価法開発を目的とし、中層集合住宅にてトレーサーガス実験を行った。今回はトレーサーガス放出条件に対応した室内濃度分布の評価を試みたが、風下側開口部においては、濃度分布は概ね一様になること、風上側開口部においてトレーサーガス放出を行うと、風下室では概ね室内濃度が一様になる等の知見を得たが、室濃度の時間変化は、各室一様拡散を想定した連立常微分方程式では十分記述できないことが判明し、今後更にトレーサーガスの放出法や室空気の攪拌について検討が必要なことが分かった。
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