本年度は、スウェーデンにおける痴呆性ブループホームについて現地調査を実施した。その結果、1)1985年頃から本格的に導入されたグループホームは、痴呆性高齢者ケアに有効なケア方法として脚光を浴び、建設するコミューンに対して国が補助金を出したこともあって、80年代末から急速に増えたこと、2)グループホームが導入された当初は、病院をモデルとする大規模な施設で痴呆性高齢者を混乱させてきたことへの反省から、入居者定員は6名と定められており、複数ユニットを同一敷地内に建設することも禁じられ、独立型のグループホームしか認められられていなかったこと、3)しかし、こうした初期のグループホームでは、小さい故にストレスを吸収する柔軟性が限られ、脆弱な点もあり、また、入居者が高齢化し重介護が必要になってくると、スタッフの負担が重くなり、疲弊してしまうなども問題点が顕在化してきたため、複数ユニット統合型や老人ホームやシュクヘム改修型等による併設型のグループホームが登場するようになり、特に1992年のエーデル改革の際に導入された、グループホーム建設推進のための時限付き国庫補助(1棟単位50万クローナ)が1997年に廃止されると、1ユニット当たりの入居者数が8〜10人に増えたこと、5)こうしたケアシステムの変化に伴い、当初は45m^2あった居室の床面積も25〜28m^2にまで減少し、これ以上小さくできないサイズになると同時に、同様の理由で台所もキチネットに替わってきていること、6)入居者の重度化の傾向も出てきており、ターミナルまでの対応を前提とする施設や、ごく一部ではあるが、前頭葉性痴呆を受け入れるグループホームも出てきていること等、制度化されて15年経過したスウェーデンの痴呆性グループホームについて、ケアおよび空間機成の変遷を明らかにした。
|