本年度は、痴呆性高齢者がグループホームという環境で作り上げている生活と、それを成り立たせている重要な要素・要因について見出すことを目的としてわが国のグループホーム事例について調査を行い、個々の「役割」や、様々な「場所」、「人間関係」を通して個々の生活リズムが形成されている実態が明らかになった。しかしながら、現在の環境の中で住みこなしている姿が見られる一方で、ADLが高く痴呆度も低いにも関わらずテーブル自席から動くことなく生活する事例や、共用空間で他者と居合わせることを避けて居室に篭っている事例など、現在の建築環境によって、その生活が限定されている姿についても示唆された。 また、グループホームの建築計画事例については、日本、スウェーデンともに1)長い廊下を作るとアルツハイマー型痴呆の高齢者は自分の部屋の位置がわからなくなり、廊下を行ったり来たりして、意味のない行動を繰り返す結果となるため長い廊下を作らないこと。2)入居者が常にケアワーカーの視野に入っているよう、Visibilityのある共有空間を作り、スタッフが入居者の行動を把握しやすく、かつ労働負担を軽減できるようにすること。3)意味のある行動が展開できるように、家庭的な雰囲気を作ること、の3点が確認された。
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