二酸化炭素を中心とする温暖化ガスによる地球環境の悪化は、現在の世界が直面している最大の問題であり、運輸と民生部門からの二酸化炭素排出には、われわれの日常生活が深く関係している。そこで、大量生産・大量消費に支えられた現代のライフスタイルに起因する二酸化炭素排出量を推計して比較検討することを目標とて、2つの面からアプローチを行った。第一に、日本建築学会が発表した1990年の二酸化炭素排出原単位を家計調査データと関連づけることにより、家庭生活に関連して排出される二酸化炭素の量を推計した。平均的な家庭に加え、世帯人員、世帯主年齢、住宅所有関係による違い、さらに、都市階級や大都市圏の差に示された生活様式の差による二酸化炭素排出量の格差と、その経年変化を検討することにより、世帯や地域のあり方が二酸化炭素の排出量に深く関係していることを明らかとすることができた。次に、今後の対策を考えるには都市・建築・住宅政策、そして家族のあり方等の杜会的な側面が重要になるという観点から、地域における生活様式に深く関連するいくつかの事項を検討した。検討の中心は、戦後における家族のライフサイクルと住宅所有の関係、都市の郊外拡散を規制している線引き制度である。さらに、2000年3月から借家契約に導入される定期借家制度が居住関係に大きな影響を及ぼすと予測される点から、かつて借家保護を大きく後退させ、その後再び復活させたドイツの実態を、判例と立法の動きを中心に考察した。 地球環境に関係した問題の広がりは巨大で、本研究はまだ多くの課題を積み残している。今後はさらに視野を拡大し、より広く検討を進めていきたいと考えている。
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