地域空間は、人々の生活の場として自然環境を基盤にさまぎまな人為的開発の総体によって形成されている。安定した良好な地域空間は、自然環境と人為環境の調和のうえに、そこで営まれる日常生活において住民が豊かなアメニティと精神的充足感を享受できるものでなければならない。近代都市計画は自然環境を開発対象として捉え、人為的に改変可能なものとしてきたが、現在、さまざまな環境問題としてその限界が明らかになっており、環境条件を十分に理解し調和を図る都市・地域計画の理論が必要とされている。 本研究は、東アジアにおける空間計画原理として伝統的に継承されてきた「風水」を中心に、経験則に基づく地域環境形成手法を実証的に分析・検討し、体系的に整理することによって、地域空間計画への新たな指針を得ようとするものである。 本年度は、上記のような問題意識に基づき、次の手順で調査・分析を行った。 1.台湾において清朝末期に建設された地域中心集落17都市について、昨年度行った地形図の判読調査に基づき、台湾の研究者・留学生の協力を得て、現地調査による風水空間構造を解読・分析を行い、その特性の考察と併せて、風水理論に基づいて立地選定がなされたといわれる都市における空間構造特性の確認を行った。 2.昨年度までに行った千葉県、長野県、滋賀県の調査結果を再整理し、台湾の分析結果を加えて比較考察をい、風水空間の特徴について類型の型、属性、社会要因との関係等の面から検討を加え、その有効性と問題点を検討した。 3.成果の総合的に考察し、とりまとめ、研究の総括作業を行い、報告書を作成した。
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