1 委任条例と自主条例を連携させて、独自のまちづくりを展開させている神戸市、京都市、札幌市の事例があるので、各自治体の事例を収集し、ヒアリング調査することにより、両者の役割分担の可能性とその効果につての考察を行った。その結果、住民、あるいは民間にとって、国の法令に基づくものか、自治体の自主的なものかは基本的に関係ないことであり、分かりやすい行政が必要であり、委任条例と自主条例の連携、一体的運用は望ましいことである。また自治体の役割の重要なものとして行政の総合化があるとすれば、委任条例と自主条例の連携、一体的運用は望ましいことが判明した。 委任条例と自主条例の連携、一体的運用の事例 (1)委任条例と自主条例との連携による一体的な運用の仕組み 京都市の「風致地区条例」(委任条例)と「京都市自然風景保全条例」(自主条例)の一体的、総合的な運用 札幌市の風致地区条例(委任条例)と「緑化推進条例」(自主条例)のそれぞれの条例見直しによる連携した運用 (2)委任規定と自主規定を単一条例に組み込み運用する複合的な仕組み 神戸市の「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」 京都市の「京都市市街地景観整備条例」 2 都市計画法改正に伴う条例事項の拡大についての考察を行った。都市計画における集権的あり方から分権的あり方への変化は、都市計画が国民の財産権に強い制約を課すという基本的性格から全国的な公平性・平等性を第1とする考え方から、地域の実情を踏まえた多様性・選択性をも加味したものへと変化することを意味している。平成12年の都市計画法改正は条例への委任を法律上明らかにしている部分が拡大しれおり、その内容と意図とを明確にした。 3 委任条例によるまちづくりと自主条例によるまちづくりの関係が、近年の地方分権の拡大や市民参加の要請の増大のなかでどのように変化しているのか、あるいは両者の関係がどのように変化しているのかを考察した。その結果、委任条例が持っている法令に位置づけられていることによる実効性の高さと、自主条例が持っている地域の多様な行政ニーズに対応する総合を、互いに補完関係として活かしあう仕組みが今後のまちづくり行政に必要であることが判明しまとめとした。
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