平成10年度、11年度の2年間で特別養護老人ホーム4施設で絵画の展示実験を行い、絵画を展示するという空間操作によって、入居者への刺激の効果があることを明らかにした。 (1)平成10年度は比較的症状の軽い入居がいる愛知県・岐阜県のY・G2施設、平成11年度は車椅子等を利用する人が多く、かつ車椅子で介助を受けている人も多い静岡県の2施設で実験を行った。施設の状況は前2施設が比較的空間の変化に富むが居室は片廊下又は中廊下型のタイプで、後2施設は可動の仕切りによって個室化が可能な新しいタイプの施設である。 (2)実験は両年度とも同様の方法で行い、各施設の中で最も人通りが多いと考えられる共用空間(廊下)に、絵画・照明・スピーカーを設置し、入居者の反応を録画する長時間録画用ビデオカメラで記録した。実験は、絵画設置前の5日間、日本画10点を展示した5日間、展示替えによって西洋画10点を5日間、いづれも同じ曜日を録画した。 (3)結果の概要(1)絵の設置前(「普段」と言う)にも掲示や写真が貼ってあり、それへの視認率はY・G両施設では15-20%で、I・H両施設では10%前後であった。(2)絵画設置後第1日目は、G施設約85%、Y施設約65%、I施設約35%、H施設27%と増加し、展示の効果が高いことを明らかにした。(3)展示後、視認率は多くの場合日を経て低下し、日本画展示の5日目でG施設約50%、Y施設約30%、I施設約20%、H施設15%と35〜15%程度低下することを明らかにした。(4)西洋画への展示替えによって、G施設約80%、Y施設約30%、I施設約30%、H施設約20%の視認率となり、G施設約30%、I施設約10%、H施設約5%と上昇したが、Y施設ではほとんど変化が見られなかった。その後、日を経て低下するが、I施設のみ最終日の5日目に約30%の視認率に上昇した。(5)この他にも展示空間の通過時間の増加、展示位置による絵画別視認率の違い等を明らかにした。 (4)以上、絵画の展示効果を明らかにしたが、視認率は患者の状態や生活内容で異なる。
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