研究概要 |
本研究は,阪神・淡路大震災の被災市街地における住宅再建とまちなみ形成のための住環境誘導手法について,特に自力再建住宅に着目し,その再建と住環境整備,まちなみ形成の誘導手法として適用されている計画・制度の効果を検証するものである。 本年度に実施した研究内容は,以下の通りである。 1) 被災市街地における住宅の復旧過程と復旧の阻害要因に関する考察:ここでは神戸市の東西のインナーエリアである灘区味泥地区と同長田区野田北部地区を対象に,震災直後から実施してきた外観目視調査による復旧過程を把握し,それらを建物形式,敷地規模,接道条件,そして権利関係からおのおのの特徴を導くとともに,数量化II類によって復旧の阻害要因を明らかにした。 2) 被災市街地における自力再建住宅の配置・立面構成の特性に関する考察:野田北部地区における自力再建住宅(124件)を対象に,その配置構成や立面構成を類型的に把握するものである。ここでは再建住宅の配置構成および外構部分の構成を,敷地規模や形状,接道形態に着目して,それらの相関を把握するとともに,再建住宅によってつくりだされている街路景観の特徴と立面構成の類型的な把握を行った。 3) 街並み誘導型地区計画を適用した再建住宅の特性の把握:住宅再建とまちなみ形成のための住環境誘導手法の一つである,野田北部地区における街並み誘導型地区計画とインナー長屋街区改善誘導制度(以下,インナー長屋制度)の適応をうけた再建住宅(30件)を対象に,その緩和項目,内部空間の構成,外部空間の構成について類型的な把握を行った。 4) 街並み誘導型地区計画とインナー長屋制度を適応した街区再建シュミレーション:先の実際の再建住宅の特性の把握をふまえ,野田北部地区の1街区を例に,従来の一般規制のもとで再建を街区全体で行った場合と,街並み誘導型地区計画型とインナー長屋制度を適用して街区全体を再建した場合における,住環境の差異を析出した。
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