平成11年度は、鹿児島県下の市町村を対象に「広域行政圏域に向けての基礎的研究」(発表論文参照)のおいて導き出した市町村間の結合力をもとに、人口規模、面積規模および結合力の指標を用い広域圏域を仮定した。結合力とは、各種サービス機関の施設圏域の中でも複数市町村が集合して構成されるものを対象として、ある市町村と任意の市町村が同じ施設圏域に組み合わせる数である。この数値により地域住民の日常生活における行動圏や意識圏としての市町村どうしの結びつきの判断指標とする。さらに、施設を供給する有効な人口規模として5万人、広域的利用に準じた施設の利用を考える場合、バス移動1時間以内の距離、半径6〜10kmという範囲を基準として、広域圏域面積を300km^2以内と仮定した。次に、各市町村に整備されている施設の延床面積と人口規模による整備指標を用いて広域圏域間での施設整備水準の格差を明らかにし、市町村圏域と広域圏域の施設整備水準の変化を比較、考察した。 分析の結果、整備のみられない施設や整備指標の低い施設は広域圏域を形成することでその指標が高くなる例や偏った施設整備が広域化により改善される例が多くみられた。また逆に広域化による整備指標の低下もみられた。これは、整備指標の高い市町村が他の市町村と施設の運営、管理を行い、複数市町村による施設の役割分担を明確にすることでより有効的な施設利用の可能性を持つと考えられる。また、広域化による整備指標が高くなるものは、狭い範囲内で類似施設が重複している可能性があると考えられる。この場合、施設機能の複合、転換を視野にいれ対応していかなければならない。
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