初年度(平成11年度)において集落空間の共有性と環境保全規範把握のための枠組みの整理を行ったが、それに引き続き、集落における環境共有性の変容の追跡調査、ならびに、規範の再構築を検討するための事例調査を行った。 環境の共有性の変容の追跡調査としては、主に南風原町の集落を対象として、集落の戦後史記録を整理し、特に共有空間の扱いについて戦後復興期から本土復帰後の社会資本整備期にかけての流れを整理した。コミュニティの水環境や緑地保全機能は縮小するとともに相当部分が行政組織の機能に吸収されたが、一方で祭祀行事など生活文化に直結した象徴的行為の中に継承されている要素もあり、再構築の手掛りが見出される。 さらに、現代の都市空間の状況と対応した検討事例として、旧集落を含めてスプロールにより都市化した地域を取り上げ、従来の自治会と1990年代に活動を開始した市民活動団体の活動内容と環境保全規範に関わる役割の検討を行った。事例は安謝川の上流域の複数の自治会および一つの市民活動団体を取り上げた。 既存の自治会の場合、水に関わる生活文化や地域情報について豊富な情報を共有できる可能性をもっているにも関わらず、維持運営のむずかしさから環境に直接関わる活動を行うことについて限界を有している。一方で、市民活動団体は特定の目的に沿って集中した活動が可能な一方で地域社会に直接働きかける条件に欠けている。以上のことが、個別の活動経緯の分析から考察されたが、さらに、両者の抱える課題を克服するための試みとして地域環境関連情報の共有化のための既存自治体組織と市民活動団体の連携的活動の事例を取り上げその意義を考察した。
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