本研究は沖縄の集落を対象として空間の共有性と環境保全規範の変遷および再構築の展望について実態調査にもとづき考察を行ったものである。 沖縄の集落を環境面で分類すれば3つに類型化される。すなわち、山原型、石灰岩台地型、珊瑚礁島嶼型である。このうち、石灰岩台地型集落は戦災と戦後復興、さらにその後の急激な都市化を経験しており、現代における諸問題への対応を考察する上で適切な調査対象として選定した。 集落形態の原形を第二次大戦(沖縄戦)以前の状態の記録をもとに整理したところ、小丘陵が北側に位置し、共同利用空間が集落内に分布するプロトタイプを見出すことができた。19世紀末の「村内法」の記録により、これらの集落空間構成に対応した環境保全規範が共同体のルールとして存在したことが確認された。 集落は共有空間を現在も保有しているが、これらは沖縄特有の歴史的経過により多様な共有空間として分布している。これらの共有空間は環境保全規範の継承にあたって重要な要素であるが、同時にコミュニティの社会的構成の変化への対応という課題が存在する。 集落環境上重要な要素である丘陵緑地は、戦後徐々に減少している状況が確認された。さらに詳細な事例検討を行ったところ、この減少の背景として複雑な社会的経緯があることが見出された。すなわち、戦前における軍の駐屯における聖域や共同利用空間の利用、戦災による破壊、さらに戦後復興における共同利用空間の改変である。環境保全規範の再構築の展望については、戦後史の経緯を踏まえた共有空間の再生と地域社会の変化の様相に対応した地域社会の変革ならびに市民活動団体の役割の重要性が確認された。
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