本研究は、平成10年度から12年度の3カ年にわたって、都市と農村・地方の連携・共生といった視点から研究を進めた。具体的には、阪神・淡路大震災後の高齢者・子供の農村・地方への避難(疎開)現象に着目し、(1)福祉居住拠点としての農村地域の役割・被災疎開の実態把握、(2)農村地域がもつ高齢者の安定的居住システムの解明の2つの研究課題を設定した。 (1)については2つの全国調査資料(「被災後の高齢者の移住に関する調査」「被災後の児童・生徒の転校状況に関する調査」)の収集、西日本過疎自治体への震災支援調査の実施、(2)については山陰・東海地域の農村調査、さらに東北、中国、北陸での農村高齢者居住調査によって、研究を展開した。 その結果、阪神淡路大震災における生活弱者の被災疎開の受け入れや農村から被災地への多様な支援の実態を明らかにし、改めて都市-農村の共存・共生関係の重要性が確認できた。さらに農村地域社会や家族の共同的性格が、現代的な変容を見せながらも維持され、高齢者の安定的居住を支えており、さらにそのような地域社会の存在が帰還者を受け止める基盤となっていることが確認できた。
|