科学研究費補助を含んだ本年度の主たる調査研究は、(1)既往調査研究の整理、(2)国内外文献資料の収集、(3)北アフリカ・チュニジアにおける風土と住まいに関する調査、(3)東南アジア・タイにおける風土と住まいに関する調査、(4)韓国農村住居における環境と住み方調査、(5)新潟県川西町・青森県八戸市・沖縄県名護市・埼玉県久喜市における水環境調査である。これらの資料をもとに、本研究課題に関して次の検討を進めた。1.韓国のオンドルバンではかまどの廃熱を床下に通し、土床に蓄熱させ、冬季でも20度以上の床温を確保することができる。対して、デチョンは外部に吹き放しの板床であり、夏季でも自然通風が確保される。伝統的な韓国住居は、オンドルバン・デチョン、すなわち廃熱利用・自然通風に依拠した住み方である。2.湧水の豊富な八戸市では、湧水を道に誘導し、共同の水場として利用する。水場は2〜3段に区分され、飲用・上洗い・下洗いとする。多雪の川西町では、伏流水を引き込み生活用水としたうえで、余水を庭の溜枡・溜め池にため、夏は田やレンコン畑に、冬は雪解け池とする。沖積低地の久喜市では、河川を分流させたうえで途中に溜井を設けて水量を確保し、土地の高低差に合わせて配水する。配水された田の水は、順次、低い田に入り、もとの河川にもどる。水の不足する名護市では、雨水を庭のタンクに集め、珊瑚礁や木炭を用いて浄化し利用する。排水は砂地の庭の溝に通し、浄化浸透させる。いずれも水の流れを読みとり、水の流れを損なわずに水を利用する水共生の作法がうかがえる。
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