科学研究費補助を含んだ本年度の主たる調査研究は、(1)既往調査研究の整理、(2)国内外文献資料の収集、(3)韓国の現代住居における住み方調査、(4)中国・山東建築工程学院での廃熱利用住居に関する学術交流と無錫における伝統住居の調査、(5)岡山県吹屋・宇治、香川県塩飽諸島、徳島県出羽島、愛媛県外泊、広島県沼隈における建築構成素材と屋敷地形成手法に関する調査、(6)山形県雪の里情報館・北海道寒地住宅研究所において採暖方式に関する聞き取りを行った。これらの資料をもとに、本研究課題に関して次の検討を進めた。1.韓国におけるオンドル暖房方式は生活様式として定着しており、戸建て、集合の現代住居でも温水を用いた床暖房が敷設され、伝統的な生活を担保している。2.寒地では、床や壁などの蓄熱性を高めることで、低温暖房による伝統的な開放型の間取りを有効に暖めることが可能になる。3.山間地における水田経営の民家は等高線に沿って立地し、平地部で商工業などを営む民家は道路を空間軸として配列し、いずれも敷地造成に近在の石を用いる。4.民家を構成する素材は、近在に産出する材を原則とし、釉薬瓦や弁殻などその土地の環境条件に耐えられる加工が施されるが、流通の発達により、街道、舟運や海上交通路を経由して、耐用性の高い素材や釉薬・弁殻などの加工技術が伝搬する。5.採暖方式や民家配列、素材構成は集住地に共有され次代に伝承されており、それぞれの土地で共通の屋敷配置、住み方、外観構成を形づくっていて、地域に固有の文化を表現している。
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