福井大学工学部・松下研究室の執務スペースを研究対象とし、既存スペースの実態調査(実測、使われ方観察調査、在室率調査、ユーザー満足度調査)を行った。その結果、コンピュータ作業を中心とする個人席と端末機の配置方法に問題がある事が明らかとなった。これらの問題点を解決をするため、ユーザーの手作り木製家具(机と間仕切りを兼ねた資料棚)を用いたフリーアドレスを実現し、事後の実態調査を実施しつつある。 現段階では個人スペースと端末機の配置に関する問題点はほぼ解決されているが、フリーアドレスに対応したノートパソコンの台数に限りがあり、スペースの有効活用が必ずしも十分ではない。また、フリーアドレスという新しい使い方に即したスペース使用ルールが未整備であることから生じる問題点も明らかとなってきており、ノートパソコンの充実と具体的な使用ルールの試行・確立が次年度の研究課題である。 一方、フリーアドレス化によるスペースの有効活用をはかる上で、主要な分析手法であるユーザー満足度評価の方法にかかわる問題も明らかになってきている。すなわち、事前と事後の満足度評価を行う場合、「事前と事後を個別に評価して分析者が比較する方法」と「事後にユーザーが事前と比較評価する方法」を試み、両者を比較分析した結果、それぞれの評価法の特徴が分析できつつある。さらに、スペースと使い方が改修結果によって変化する場合、新たなスペースに対する事前と事後の比較評価をどのように行うかという、評価項目そのものの関わる問題も明らかになりつつあり、ファシリティマジメントにおける評価法にかかわる新たな知見と研究課題が得られてきている。 したがって、次年度は研究執務スペースの有効利用の研究に留まらず、評価方法についても研究を進めるとともに、研究対象を千葉工業大学・工業デザイン学科の施設へも拡大し、福井大学での研究成果を応用する予定である。
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