本研究を通して、山の手住宅地が首都圏において、郊外住宅地の一典型となった経緯を整理し、その変容について居住者の住生活との関係において分析を行った。さらに、戦後大衆化し、郊外部の居住地として広大な面積を占めているこうした住宅地の現状と今後の変容について考察を行っている。 戦前に開発された住宅地および居住者の居住歴の調査を行い、居住者のニーズが住宅の増改築、更新の動機となっていること、その関係を明らかにした。また、居住者の高齢化が住宅の維持管理や更新の妨げになりつつあることを指摘した。その背景には、子どもの世代との同居や子ども世代の居住継承が少なくなっていることがある。 こうした戦前に開発された山の手住宅地の変容を、家族の住生活との関連で分析するなかで、専用住宅に特化していることがこうしたメカニズムを生んでいるものと考え、住商工混在した併用住宅の多い下町地域での変容との相違を把握することにし、先立って実施していた下町地域の調査結果との比較、考察を行った。 さらに、戦後開発された郊外住宅地の変容を把握するために、湘南鷹取、多摩ニュータウンで調査を行い、30年余を経た現在、同様の課題が顕在化していることを明らかにした。こうした戦後の郊外住宅地における今後の変容に対する対応について、そのコントロールと住民によるまちづくりの重要性を示した。
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