本研究の目的は、これまで継続的に調査してきた伊勢湾離島集落を対象にして、その共同性のしくみを明らかにするとともに、過疎化しつつある昨今の集落の状況をくい止めるべく再生手法を追求することにある。 この目的に沿って、3年間の継続研究を行った。とくに答志集落については、初年度の平成10年度に5年おき5度目の調査を行ったことで、1978年、1983年、1988年、1993年、1998年と、20年に及ぶ5年ごとの断面を捉えることが可能となり、その変化過程を分析したうえで、共同性のメカニズムを問い、共同性が過疎を免れる離島居住の条件となる諸側面を明らかにした。 集落の再生手法を課題に据えることで、共同性は、(1)集落ごとに特徴をもつ住居の型を持続させること、(2)住居を村落に開くためには住居を使った儀礼慣行が不可欠であること、(3)セコミチと称する露地空間の役割を積極的に展開させること、(4)複雑な社会システムをできるかぎり持続させること、の4つの水準に絞ることが可能である。 そこで、集落空間を構成する立場から、それらの水準を読みなおし、住居の形態、通路の役割と形態、住居相互のネットワークの3つの再生条件を抽出した。これらの再生条件は再生手法を導き出す枠組みや方向性として位置づけられるものであるが、再生手法そのものではない。そこで、本研究では、答志集落を対象にした再生手法の一例を、モデルとして提示した。 本研究は、とくに離島のような過疎に瀕する集落では、自らのアイデンティティを強く認識し、それを持続させる意志を住民が共有しなければ、集落もまた存続しにくいこと、それゆえに、一般解の適用は過疎を促すだけで何の解決にもならないことを示している。
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