本研究は守山市小津神社の集落祭礼における祭礼儀式行事の現地調査を行い、図式化の手法を用いて分析をし、施設環境と人々の祭礼行動が相互に影響しあう関係によって集落の祭礼環境の空間構造が構成されることを明らかにしている。また同時に、この祭礼に関する郷土史料である赤野井町の諏訪家文書を用いてそこに記録されている祭礼の歴史的伝承を考察して、祭礼の空間構成が表現しているシンボル的表現の内容を分析することによって、祭礼の行動表現と空間構成が集落共同体の歴史的風景を再現していることを明らかにしている。祭礼の空間施設となる、1)小津神社の広場型構成の大境内空間、2)赤野井馬場道の道空間、3)赤野井若宮神社の屋敷型構成の小境内空間の3つの異なる祭礼施設の類型における調査事例により、祭礼施設環境に発生する空間構造の分析を行い、同一の施設環境において、祭礼行動に従って異なったいくつかの空間構造が発生していることを考察している。それは集落の祭礼という事例を通じて、都市的空間と人間の行動の関係性が現実の空間構造の形成し、その空間の姿を構成することを明らかにしようとする試みである。さらに小津神社の祭礼は都市的空間における、シンボル的表現の行動と空間であり、集落共同体の歴史性がそこに表現されているいることを発生的空間構成の分析において明らかにした。祭礼の経路、祭礼を先導する鉾、祭神神輿の行動、奉納芸能の場所などのように、シンボル的表現として目に見える表現形式により、発生的空間構成に重層させて、祭礼集落の歴史的創立期の共同体組織の支配秩序の歴史的構造が再現されているという知見の成果を得ている。
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