本研究は平常時の地域火災危険度を分析するとともに、阪神・淡路大震災のような大地震時の火災にも対応することを考慮して、消防計画を策定しようとするものである。本年度は神戸市消防局と神戸市水道局の協力を得て、消火を考慮した延焼状況の分析を行なうとともに、火面周長の分析や全壊率を考慮した延焼速度の時間的変化の分析および出火原因と延焼速度の関係の考察を行い、消防水利計画や所要消防力などの検討を行った。すなわち、まず全国の市町村別火災データの詳しい分析を行い、地域の火災危険度についてGIS(地理情報システム)ソフトシステムを用いて、全国市町村単位別の出火・延焼状況等を把握するともに出火・延焼に関する要因などの検討を行った。さらに、神戸市における過去10年間のデータを町丁目単位で分析し、地域火災危険度を把握し、地域特性等が平常時と地震時とでどのように関連しているかなどについて検討を行った。 以上の結果、GISを用いたコンピュータによって処理することにより飛躍的に実行速度が早くなるとともに、数多くの情報を利用できるようになることがわかった。情報の視覚化のみでなく、情報検索並びに空間分析(様々な事象の空間的特性や相互関係の把握)を容易にし、様々な情報をGIS上で統合することで、客観性、妥当性、透明性が確品され、意思決定支援などにも幅広く利用できると期待される。しかし、膨大なデータの入力およびメンテナンスの面やソフト間での互換性等々、まだ解決すべき問題は残されている。 本研究では、主として火災.状況の把握について年単位で集計するようなデータを扱い、あより処理スピードに急を要しない平常時の分析を行った。しかし、これらは地震をはじめとする災害時にシームレスに対応できるようにしておくべきであり、次年度ではそのようなシステムの構築を視野に入れて研究を進めていくつもりである。
|