実際の駅において、情報障害者として視覚障害者・聴覚障害者および健常者各々10名ずつの探索行動実験を行った。探索行動の実験中の被験者データとして被験者自身に装着したビデオデータと被験者の後方から行動記録したデータ、さらには実験後にヒアリングしたデータおよび被験者による経路をスケッチしたデータを収集した。分析では、実際の環境との整合を整理した上で、探索行動中に生じた「迷い」とその後の「迷いのブレイクスルー」の状況を詳しく分析した。特に、明らかになった点は以下のようである。 ・情報障害者は、入手情報が制限されるものの、適切に情報が提供されれば、迷うことなく目的のプラットホームに到達する事ができる。 ・むしろ、健常者の方が複数の情報が入手可能なため、色々な行動が誘発されやすく、結果的に「迷い」が多く生じるケースが多くあった。 ・情報障害者は、探索途中で適切な情報入手ができずに「迷い」が生じた場合に大きな問題が生じ、どのように「迷いからブレイクスルー」するかが重要な要件となる。 ・「迷いからのブレイクスルー」において、視覚障害者の場合、音の情報や人的支援が重要な役割をし、聴覚障害者の場合、視覚的情報のダブルコード(2つ以上)で確認することや、特に電車そのもの情報が「迷い」の解消には重要な意味を持っている。 現在は、その分析データをコンピュータ上に整理し、環境と迷いとの関連性をモデル的に説明できるかどうかの検討を行っている。また、既に実験データの一時集計結果を基に、建築学会・人間環境学会の口頭発表、アジアデザイン国際会議での論文発表、生理人類学会での論文発表を行った。 来年度の予定としては、「環境と迷いのブレークスルーとの関連」について考察し、その結果をEDRAおよびIAPSの両国際学会での発表し、建築学会での論文投稿することを計画している。
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