本研究はノーマライゼーションの理念に基づき、居住・福祉サービスの小規模分散配置、家庭的環境条件整備の視点からグループホームと社会福祉施設の存在形態と改変方向を明らかにすることを目的としている。 本年は東北6県の居住型各種社会福祉施設・老人保健施設分野全施設1009件を対象に居住機能・空間問題に焦点を当ててアンケート調査を実施した。有効回収数は593例(回収率58.8%)であった。居室構成をみると、個室中心型から4人部屋中心型、一部大部屋型と広く分布し、養護児童、知的障害児・者、身体障害者、高齢者と主体条件が異なる施設種類の違いが居室構成の差異と対応していることが明らかになった。また、同一施設種内でも建設時期、方針等が反映して様々な形態に分れている。生活単位についても同様な傾向がみられた。現状の施設空間に対する不満も「間取り」を中心に多くの項目で顕在化しており、空間条件の諸問題の所在が明確化した。改革の方向については施設種間で差異がみられ、小グループ化、家庭的空間化については肯定的・否定的見解がともに存在し意見が分散している。各項目に関してさらに分析を深めているところである。 脱施設化の流れの中で実践が拡大しているグループホーム的居住形態について、先駈例のケーススタディを実施した。施設を拠点として地域展開している例として、コロニー雲仙(長崎県)、カナンの園(岩手県)、ほたる学園(宮城県)等を訪問調査し、存在構造と展開方向を把握した。施設、自立訓練ホーム、グループホームとネットワークで地域展開をしていることが明らかになった。また、以前調査した宮城県内のグループホームを本研究でも継続的にケーススタディし、経年変化、住み方、住要求、地域生活展開について考察した。その結果、個室・居間の有効性や地域生活の拡大傾向が明瞭になった。
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