本研究では、かつて西欧と日本を問わず、内外の建築家によって指摘されてきた西欧モダニズムの成立に果たした日本の建築的伝統の影響について再度注目し、生成期のモダニズムについての再考を目的とした。 そのために、まず西欧における日本の伝統的な建築の紹介を歴史的に辿ることから始めた。すなわち、西欧における日本の建築についての理解と視点がどのようなものであったかということを歴史的、客観的に評価しなおすために、欧文図書として出版されていた日本関連の図書を詳しく調査し、順次、当時の西欧のモダニズムの建築家の言説を照査する事とした。ただし、前者の調査が予想以上に膨大であったために、後者については作業がの途上にある。 また、対象とする期間についても、世紀転換期のいわゆるジャポニスム等の予備的な研究も必要としたため、両者を隔絶した傾向として捉える従来の視点を変えて、一連の相互干渉、文化的影響関係として捉え直し、特に図版情報の分析を行い、当時の西欧の建築家が得られる日本の伝統的建築の範囲とその内容について明らかになったと考えられる。
|