昨年度報告した「華厳五十五所絵巻」と同じ経説絵巻に分類される、主として鎌倉時代の「a法華経絵巻」、「b餓鬼草紙絵巻」、「c地獄草紙絵巻」、「d病草紙絵巻」、「e九相詩絵巻」について『日本の絵巻』、『続日本の絵巻』(中央公論社刊)から平行投象的手法によって描かれた場面における、建築構造体・調度などの奥行きを示す斜線角度や長さを計測し、そこから視線方向を求め建築空間の表現を分析し、一部「f華厳五十五所絵巻」も含め報告した。その結果、次の特徴を指摘した。 今回の5作品で(1)に引目鉤鼻の手法は用いていない。(2)吹抜屋台「b」2景、「d」7景。 (3)右斜線図57.4%、左斜線図31.9%、また、「f」もふくめ(4)「f」「a」は水平線と斜線の開きが平均で右斜線図136.5゜、左斜線図139.3゜。(5)「b」「c」「d」「e」は両斜線図、片斜線図とも正面と奥行きを示す斜線の開きは、平均約130゜。(6)「f」「a」は「b」「c」「d」「e」に比べ小さな俯角が多い。 次に、説話絵巻に分類される平安時代後期の『吉備大臣入唐絵巻』について、同様な計測を行い、その値から視線方向を求め建築空間の表現を分析した結果、次の特徴を指摘した。 (1)6段からなる絵巻の各段に描かれる6宮殿が「吹抜屋台」で描かれる。(2)第1段遣唐船上の2つの場所を除く18の建物と基盤1つが右斜線図で描かれる(90.5%)。(3)斜線角度平均46.9゜。第1段は5.1゜大きい、第3段は4.6゜小さい平均角度で描かれる。(4)俯角範囲24.4゜〜34.0゜。方位角範囲23.2゜〜39.6゜。
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