関東大震災後から区画整理までの銀座の商店・事業所について、東京都公文書館が所蔵している、「関東大震災移転補償及び移転計画図」を用いて、この時期の銀座における建築機能の分布を明らかにし、銀座の持っている特性を考えている。 建築機能については、前年の研究である明治10年代後半と同じく6つに分類し、さらにその機能を14の施設などに分類し、地図の上に商店・事業所の位置をおとしていくことで、この時期の都市的な特性を読みとっている。なお、史料が完全にそろっておらず、地域によっては空白にならざるを得ないところもあったが、1173例の商店・事業所について機能が特定できた。 また、建築機能の特性をみるため、商店・事業所の機能別数量と割合、さらにそれらが、表通りとも呼べるような広い通りに位置しているか、あるいは裏通りと呼んだほうが相応しいような狭い道路に位置しているかなどについても明らかにしている。 その結果、この時期の銀座が、比較的広域な範囲の客を相手とする商店・事業所が多い一方で、地域の生活者と密接な関係をもった近隣型の商店・事業所を持っていたことが明らかになった。 関東大震災後の商店・事業所の分布を細かにみていくと、銀座では、「生活用品販売施設」といった、広域型の客を相手とするような商店・事業所が銀座通りを中心に多く分布し、その周囲に「情報文化施設」「娯楽施設」「外食施設」などが、地域的な片寄りを持って分布する構造をもっていたことを指摘できる。
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