関東大震災前、大正期の銀座の商店・事業所について、大正期に発行された『商工信用録45版』『大日本帝国商工信用録32版』『帝国信用録15版』『大日本商工録』および、『東京横浜職業別電話名簿』を用い、商店・事業所の建築機能を明らかにし、この時期の都市・銀座のもつ特性を考えている。建築機能については、先行研究の明治10年代後半、および関東大震災後から区画整理までの年代と同じ6つに分類し、さらにその機能を14の施設などに分類している。 史料から明らかになった商店・事業所の数は、2069例あった。これら商店・事業所の位置を同時代の地図の上におとし、その分布を見ることで、時代が経過していくなかで都市・銀座がどのように変化していったかについても考えている。同じ番地でも範囲が広く、明確に建物の位置を定められなかったものもあったが、これらの例についても、位置する街区については特定できた。 その結果、関東大震災前、大正期の銀座が、広域型の性格を強くもちながら、その一方で、近隣型の商店・事業所が、数は少ないもののまだ健在であったことが明らかになった。また、銀座のなかでも中心的な役割を果たす、中央通りに位置する商店・事業所は581例明らかになったが、そのなかで多い建築機能は、買い回り品販売機能のうち生活用品販売施設の211例、業務管理機能のうち業務管理施設の99例、買い回り品販売機能のうち非生活用品販売施設の65例で、これらだけで中央通りに位置する商店・事業所の65パーセントにもなる。
|