明治35年に発行された「東京市京橋区銀座附近戸別一覧図」がある。ここには、銀座の街を構成する一軒ごとに、店名・事業所名(屋号・社名)、氏名、住所・番地、電話番号と、そこで営まれている業種(職業、取扱い品)が記されている。本年は、この一覧図を用いて、明治35年の銀座における建築機能の分布を明らかにし、銀座のもっている特性を考察した。 建築機能については、先行研究の明治10年代後半、関東大震災前・大正期および関東大震災後から区画整理までの年代と同じ6つに分類し、さらにその機能を14の施設などに分類している。 一覧図から得られた商店・事業所の数は2752例で、これらの分布をみることで、明治35年の銀座の特性を考えている。その結果、明治35年の銀座が、近隣型と広域型の商店街といった、二つの性格をもっていたことが明らかになった。また、賑わいが中央通りを中心に、京橋から新橋方向に線的に広がっていったことや、賑わいの地から遠い、新橋側の裏通りに花柳街が形成されていたことも明らかになった。 なお今年度は、本研究期間の最後の年度にもあたるので、明治35年の銀座について考えると同時に、研究の目的である、明治前期から昭和戦前までの、都市・銀座の変遷についてまとめている。
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