研究課題/領域番号 |
10650638
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研究機関 | 女子美術大学 |
研究代表者 |
勝又 俊雄 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (70224475)
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研究分担者 |
伊藤 重剛 熊本大学, 工学部, 助教授 (50159878)
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キーワード | ギリシア建築 / 近代建築 / ネオ・ビザンティン様式 / クリスティアン・ハンセン / テオフィルス・ハンセン / L.カフタンゾーグル / リヴァイヴァル様式 / 歴史主義建築 |
研究概要 |
交付申請書に記した「研究の目的」の五点の目的の中から平成10年度にはその三点を達成することを目指した。つまり、1)クリスチャン・ハンセンがネオ・ビザンティン様式を創造するに至った契機とその経過を明らかにする。2)ハンセン設計の「アテネ王立造幣所」を分析し、ネオ・ビザンティン様式の最初の建造物がどのような特徴を備えていたのかを明らかにする。3)ハンセンの弟のテオフィルスの「眼科病院」を取り上げ、窓だけではない建築全体としてのネオ・ビザンティン様式がどのような特徴を備えるのかを明らかにする。1)の目的に関して、ハンセン兄は、独立後のアテネ市内外に存在したビザンティン及びポスト・ビザンティン時代の多数の大小聖堂(総数134)の存在に気付き、当時の西欧においては未知のキリスト教聖堂に関心を次第に持つに至る。その内の20を水彩画に残している。特にビザンティン建築の窓に注目し、古代建築では「建築の言語」として重要となる柱と柱頭に代わって窓こそがビザンティン建築の「建築の言語」であることを発見する。2)に関して、新たな銅板画の公刊から「アテネ王立造幣所」の建築が新古典主義様式を特徴としながらも一階の窓に小穹嶐を冠する長窓を配置し、ビザンティン建築様式との折衷様式を形成していることを明らかにした。3)に関して、ハンセン弟テオフィルスあるいはL.カフタンゾーグルの作と考えられてきた「眼科病院」が兄クリスチャンの作であり、それを基にカフタンゾグルが変更を加えた上で完成させたことが判明した。さらに、新発見のハンセン兄の設計図からこの建築が小穹嶐をそれぞれ冠する二重の長窓とその中央に立つ角柱より構成される窓、窓間を結ぶ赤レンガの装飾帯そして建築の躯体から突出し、しかも左右の二本の円柱から支えられる玄関というビザンティン建築の様式を基に築かれていることを明らかにした。さらに、これらのビザンティン建築の要素は、彼が描いた水彩画の幾つかに窺うことができ、彼がネオ・ビザンティン様式を創造した源泉を知ることが出来る。
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