二年度の調査は住宅組合の実施状況について六大都市(東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)を中心に検討した。 最初に六大各都市における主要図書館・文書館を踏査して、住宅組合に関する原史料について確認した。調査した図書館・文書館は以下の通りである。 東京-東京中央図書館・東京都公文書館 横浜-横浜市立図書館・横浜市立公文書館 名古屋-名古屋市政資料館・愛知県立公文書館・愛知県立西図書館 京都-京都府立総合資料館・京都市総務局総務部情報公開課 大阪-大阪公文書館・大阪府立総合図書館 神戸-神戸市文書館・神戸市市政情報室・神戸市立中央図書館 こうした作業の中から、これまでの研究においては未使用であった『住宅組合申請書』、『住宅組合手続き台帳』、『低利資金貸付台帳』などの基礎史料を発掘した。それらの原史料を踏まえて、『社会事業年鑑』、『社会事業概要』などの刊行資料を付け加えて住宅組合の実施状況について検討した。 今年度の研究成果としては、住宅組合法の起草から廃案に至るまでの経緯について検討し、(1)住宅組合の実施過程で法案改正に関する建議書が帝国議会に提出されたこと、(2)煩雑な手続きや連帯保証制度が問題となり、法案改正が検討されたにも関わらず戦後になって実現に至ったこと、(3)昭和28年以降から中産階級への住宅供給の目的を失って昭和48年に廃止されたことを明らかにした。また全国の住宅組合の実施状況について明らかにし、次年度の発表に向けた準備を行っている。さらに今後は住宅組合法を利用した個別の住宅について調査し、実態について明らかにして行きたいと考えている。
|