ゴシック建築の代表作であるドイツ・ケルン大聖堂は、19世紀に工事が再開されているがその時の建築状況と第2次世界大戦後の修復工事について、当大聖堂のトーマス・シューマッハ博士を招いて講演、シンポジウムを行った(1999年10月10日〜10月17日)その時に明らかになったことについてまとめると次の通りである。 (1)ピナクルなどにおいては石材のジョイントに鉄を用いている。目地詰めに鉄を用いている場合もある。(2)19世紀では塔の工事が大きな課題であった。塔は4階建てとなっており、塔を下から順次完成させて行くので上部に石材を釣り上げて行くためにすでに出来上がっている下部の天井に大きな穴を空けている。(3)塔の3階では天井と床を別々にしており他では見られない構造になっている。(4)石造天井リブ・ヴォールトの、戦後の修復工事は型枠を用いないフリーハンド工法で実施されている。19世紀に完成したリブ・ヴォールトの石層を見ると戦後の修復工事と同じであり、フリーハンド工法が推定された。そのヴォールトの曲率の取り方などは今後の研究課題である。(5)石造天井リブ・ヴォールトの補修工事はリブ・ヴォールトを貫通するロープにより屋根から釣り下げられたゴンドラを用いて実施されている。(6)石造天井は火山石のトゥフTuffを用いている。(7)19世紀の工事には木製アーム式クレーンや移動式クレーン、石材を持ち上げるための金具を用いている。
|