ケルン大聖堂やその周辺では現在なおフリーハンド工法で修復工事がなされており、今回、その工法をつぶさに観察し、記録することを主眼に研究を進めた。 昨年度、五島が赴き調査したフリーハンドの工事現場であるデュッセルドルフのサン・アントニウス教会堂について、今年度、ケルン大聖堂のシューマッハ博士の協力のもとにビデオ撮影による継続的調査を行った。ケルン大聖堂西塔の石造の天井で見られる石積みの形態と同じ石積みの方法が展開されている。その特徴をまとめると次のようである。 (1)石層はアーチの形をしている。 (2)石層は傾いている。 (3)石材はモルタルの付着力を利用して積み上げ、型枠を使用しない。 (4)石材は、直方体の形状をそのまま利用している。 以上の特徴は、フリーハンド工法の中でもオリエントの形式に類似している。西欧では1560年ケルン大聖堂の工事が中断する以前にケルン大聖堂の北側廊のリブ・ヴォールトにおいて初めて現れたとプロシアの王室建築家ラッソーが述べている。 本年度はまた、ケルン大聖堂の3D化について基本的な部分を完成させた。また、内陣のリブ・ヴォールトの形状について幾何学的考察を行った。
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