研究概要 |
多相組織の合金においては、界面の熱力学的性質がバルク物性に大きな影響を与える。また、界面の性質は界面構造や不純物によって支配される。相平衡状態下の界面近傍における原子レベルの詳細な情報を得るには、単純な二相平衡問題としての熱力学を適用するだけでは不十分である。そこで本研究では、第一原理クラスター変分法(CVM)を用いて析出相を含む複雑系の合金設計制御に必要なパラメータを計算し、さらに析出物分布の変化について調べることを行った。 具体的な研究内容を次に述べる。 (1) 原子間相互作用として、引き合うか反発するかの二種類を仮定すれば、A,B,X(A,B-マトリックス原子、X-不純物原子)3原子間の相互作用はOOO,OOS,OSO,OSS(O-引き合い、S-反発)の4タイプに分けることができる。このような単純化の下で、LMTO-ASA及びFLAPW法などの第一原理法を用いて、これら4タイプの三元系状態図、FCC/Ll_2整合界面における不純物原子の優先置換位置とその分布を計算した。OOSとOSOの場合、不純物原子はLl_2相に固溶する。OSSとOOOの場合、不純物原子はFCC相に固溶する。また置換位置の優先性は温度と関係がある。不純物原子Xとマトリックス原子A,Bとが反発すると、不純物原子は整合界面(IPB)とも反発し、整合界面エネルギーγが増加する。 (2) 第一原理計算によってNi_3Alの(111)逆位相界面(APB)及び(100)逆位相界面(APB)における不純物Tiの振る舞いを解析した。結果としてTiは(111)APB及び(100)APBと反発し、界面エネルギーγは増加することがわかった。この結果はギブスの吸収方程式と一致している。また、TiはAlのサイトのみを占有すること{Ni_3(Al_<1-x> Ti_x)}、そしてNiの濃度を一定に保ってTiの濃度を増加させると界面エネルギーγが増加しNi=75%の時にγが最大になることも分かった。
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