研究概要 |
本研究補助金によりゲート付きRFアンプを更新して安定な超音波測定装置を組み上げ、系統的に高温融体の音速測定を行なった。これと平行して、ガンマ線吸収法による密度の測定、新しい熱力学関係式による構造変化に誘起される濃度ゆらぎの研究を行なった。これらの成果は10編の論文として国際学術雑誌に公表した。研究を進める際にフランス国立科学研究所C.Bergman博士とマックス・プランク研究所F.Sommer博士にレビュー(平成10年度)を受けた。 主要な成果は 1.As-Te混合系の構造変化:音速および熱膨張係数の温度依存性に現れる極小点を60at.%Asまで決定し、この極小点の組成依存性より液体Asの構造転移温度を734±6℃と決定した。 2.II-b-VIb属混合液体の構造変化:パイエルス歪みがその低配位構造の要因であると示唆されているIIb-VIb属混合液体のうちCd-Te,Hg-Te系の超音波測定を行い、CdTeは極めて安定な液体構造を持つが、HgTeは連続的な構造変化を起こすことを新たに示し、その転移温度を決定した。 3.構造変化と濃度揺らぎを結ぶ新しい熱力学関係式の導出:構造変化によって励起される濃度揺らぎを定量的に評価できる新しい熱力学関係式を導出し、これによってS-Te系の液相線の300℃以上の高温の極狭い組成領域で現れる閉館2液相分領域の起源を解明した。 構造変化によって誘起される濃度ゆらぎの定量的評価は、今後の高品位化合物半導体結晶育のキーポイントのひとつであり、系統的にその詳細を調べるために超音波測定、密度測定の継続と新たに高温融体の比熱の精密測定のための準備を進めている。
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