(1) 低温陽電子寿命測定系の組み立て 特注品の液体窒素陽電子寿命測定クライオスタットと真空系を組み立て、低温で照射または引張り変形等を行って液体窒素中に保存してあった試料の温度を上昇させる事なく陽電子線源とともに装着し、液体窒素温度から室温までの陽電子寿命が測定出来るようになった。これで、透過電子顕微鏡(TEM)によるクライオトランスファー実験との比較検討が初めて可能になった。 (2) 陽電子寿命測定 現在、6Kで1x10^<21>n・m^<-2>の中性子照射を行い液体窒素温度で保存してあった銅の試料を使って、約90Kからの陽電子寿命測定を行っている。この後、同じ保存状態の照射量の異なる銅の試料とアルミニウム等についても、陽電子寿命測定を行う。 (3) 透過電子顕微鏡の実験と像の計算 (2)で陽電子寿命測定を行ったものと同じ照射条件でかつ同じ保存状態の銅のTEM用薄膜試料があるので、これをTEM用のクライオトランスファー・ホルダーを使って約100Kから観察する実験が現在進行中である。室温以上ではこれに近い実験が既に行われているが、100K付近からのまだ原子空孔が移動できない温度からの実験はこれが初めてである。また今回は、イメージング・プレートを使って回折条件を変えながら弱いコントラストの変化も捕える予定なので、非常に微小な欠陥集合体の違いも判定できる可能性がある。予備的な実験結果として、20Kでイオン照射した銅のTEMその場観察を行い、回折条件を系統的に変化させて暗視野の弱ビーム像の変化を通常のフィルムとビデオ撮影で調べてみた。この結果は裏面の研究発表に示してあるが、低温で照射直後に微小な格子間原子型の欠陥集合体が出来ている可能性が認められた。回折条件を変化させたときのTEM像の計算は、ワークステーションを用いて進行中である。
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