研究概要 |
材料の巨視的破壊靭性は究極的に,亀裂先端の原子的構造とその近傍の格子欠陥とくに転位の挙動に支配される.そこで本研究では,脆性的性質と延性的性質の両面を持つ酸化マグネシウム単結晶について,主として,その薄膜中の亀裂先端微細構造ならびに,その亀裂先端からの転位生成過程について,超高圧電子顕微鏡法を用いて観測・解析を行った.本研究では,主に(010)面クラックとそれに付随する転位群が観察された.薄膜中において,これらの転位群はクラック前方で交差する(011),(011)の両すべり面上に存在していた.これらの転位を詳細に解析した結果,(011)面上においてクラック先端前方には左巻きらせん成分の強い転位,クラック先端後方のプロセスゾーンウェイク領域には右巻きらせん成分の強いウェイク転位が存在していた.また(011)面上においては,クラック先端前方には左巻きらせん成分の強い転位,後方には右巻きらせん成分の強いウェイク転位が存在していた.これらの転位配置から転位生成過程モデルを考案し,その妥当性を確かめるためにTEM内その場引張観察を用いて,クラック先端からの転位の生成を直接観察し転位生成過程を明確にした.また転位生成源として,クラックと表面の交線が重要であることも見いだされた.さらに,クラック先端にクラック先端再結合によって生じたと考えられる独特のラセン転位網を見いだし解析を行ったが,その結果から,破壊モードが未知のクラックのについて,その推測が可能となることも明らかとなった.
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