研究概要 |
研究課題の「クラックからの遮蔽転位の生成機構」を解明するため,岩塩型構造のMgO結晶,NaCl結晶とダイヤモンド型構造のSi結晶を用いて得られた本年度の研究実績は,次のように要約される. 1.MgO結晶の試片側面(001)に対して垂直に(010)クラックを入れ,そのクラック先端から(01^^-1)面への転位導入を透過電顕によってその場観察した.その結果,転位はクラック先端前方に右巻きラセン転位,後方に左巻きラセン転位が導入され,何れもモードIの遮蔽型成分を主に有し,モードII成分も有することを明らかにして,転位がクラックジョグ,クラッキンク,及びクラックと試片表面の交点から生成することを指摘した. 2.NaCl結晶の高温での靭性上昇原因を探るため,原子間力顕微鏡を用いてすべりを観察した結果,高温では不定面への交差すべりが微細構造を有することを明らかにし,クラック先端から生じた転位の微細交差すべりが5つの応力成分を緩和しクラック駆動力を抑制することを指摘した. 3.Si単結晶の試片側面(001)に対して垂直に(1^^-10)クラックを入れ,そのクラック先端近傍の生成転位を透過電子顕微鏡で観察した結果,転位が(11^^-1)すべり面に沿って,クラック先端の前方のみならず後方へも導入されること,クラック先端前方と後方に導入される転位とは転位符号が逆であること,何れの生成転位もモードIの応力遮蔽型であること,転位はクラック先端の外側方向に湾曲しながら生成されること,などを明らかにして,結晶型による普遍性と相違点を明確にした.
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